何十年に1回だという、神のいたずら。
そんなとき、傍にいてほしいと願うのはいけないことだろうか?





「雪?」
「なに、知らねぇのか?明日の昼、降るらしいぜ。こんな砂漠地帯でもよ」
「ずっと前に降ったということは知ってるけど、まさか自分が生きてるときに降るなんて」
「幸運だな。ここじゃ生きてるうちに見られないヤツだっているんだ」
「そうね・・・」



でも、と。彼女は夜空を見上げながら心の中で付け足す。しかし、それ以上は何もいえずに、ぼんやりとそらからダルマスカの最果てへと目を移す。
彼はといえば、さすがに夜は寒むいなといって身体を震わせる。
少し外にでるわといって、彼女が私室のベランダに行ったのは、ほんの数分前。そしてその数分の後、部屋のベッドで寝転がっていた彼はブランケットを持って彼女の傍に行った。
フランに教えてもらったこの情報を、彼女に伝えるために。



「ゆき・・・か。あなたたちとの旅で見たきりね。久しぶりだわ」
「王女様もお忙しいもんだ」
「本当。どこか、また旅にでも出たいわ。ほんの1日でいいから」



なんてね。ダルマスカの王女がこれじゃあいけないわ。彼女は笑って彼に話す。
満更嘘でもないのだろう、彼は笑顔で隠した寂しげな表情を、彼は見逃さなかった。
自分にそんな力があればな。そんな、自分の無力を自ら感じることを口にすることはないけれど、どうにかしてその寂しさを晴らせられればと彼は思う。



「今、何時?」
「0時3分」
「・・・もう、あなたがいってた”明日”ね」



彼女は小さく笑ってみせる。いつ降るんだろう、楽しみだわ。そんなことをいいながら。
昼間にでも降るんじゃねぇの?彼は彼女の隣で欠伸を殺しながら答えた。
そんな彼に、彼女は少しだけ寄りかかって話した。



「・・・今、降ってほしいわ。会議室の中から一人で見るより、あなたと見たい。そんな何十年に1回のことなら尚更。そしたら、旅に出たいなんていえないのに」



まるで独り言のようだった。彼は、そんな小さな願い抱えている彼女の頭を撫でる。
彼女の願いを叶えてあげたい。けれど、自分には議員になれるほど賢い頭などないし、雪が舞い落ちる時間をこの手で変えられるほどの力もない。
お手上げだな。彼女の願いも、無力な自分に対しても。
だからこそ、彼は願う。



「俺も、飛空挺からは見たくねぇな。視界が悪いといろいろ不都合があるからな」
「あら、でもイヴァリースきっての空賊さんなら、そんな不都合でさえ乗り越えるんでしょ?」
「俺は主人公だからな。でも主人公だからといって、困難に遭いたいとは思わねぇよ」



お気楽な空賊さんね。彼女がそういって微笑んだときだった。
白く冷たい雪が、彼と彼女を霞んだ。



「・・・うそ・・・」
「どうやら、王女様の願いは叶ったみてぇだな」



彼女は手を伸ばし、舞い落ちる雪を器用に手先にのせた。
彼はといえば、空を訝しげに見上げ、寒いと空に文句をつける。



「・・・頑張れって、誰かがいってるみたい」
「俺は寒くて仕方ねぇけど」



彼女はそんな彼を少しだけ抱きしめる。
彼女のそんなかわいい行動に一瞬驚いたけれど、彼は小さな彼女に答えるべく腕をまわす。
サプライズだなと意地悪く微笑む彼に、彼女は笑っていってみせた。



「雪を見ながら、こういうのしてみたかったの。それがあなたでよかったわ」