強いふりをしてみせたけれど、本当は、あなたの面影をずっと探していた
私が初めて、声を殺して泣いた日。
I m u s t n o t s a y g o o d b y e t o y o u
泣きたくても、泣いてはいけないのだと思った。そしてそれがすごく悲しく、悔しかった。
あなたが死んだと聞いたあの日から、私の全ての記憶は止まってしまった。
頭の中が真っ白になって、あなたと帝国、どちらも失ったのだと感じた。否、感じざるを得なかった。
私たちは、どこでなにを、どのようにして間違えたのだろう。それはいつまでも解けない永遠の問いとして残る。
それを考えるたびに、自分の不甲斐なさが身に染みる。
民も、兵士も泣いている。あのダルマスカ一の将軍、バッシュでさえもずっと下を向いている。
ならば、あなたの傍に一番近くにいた私は?他のみんなと一緒に、声を上げて泣けばいい?
だけど私は、そんなことなんてしたくない。私もまた、周りと同じようにあなたの死を認めてしまう。
「アーシェ。」
目を閉じれば、あなたの声が聞こえてくる。私に、今でも微笑みかけている。
最後なんていわないで。まだ決まったわけじゃないから、だからキスして、抱きしめて・・・。
それさえも叶わないのだと認めたとき、私はどうするんだろう。
「・・・私が一番幸せと思うのは、あなたと一緒にいるとき。」
いつか、私からあなたにそんなことをいった気がする。もう、ずっと前の話だけれど。
そして確かにあなたはあのとき、私の耳元でそっと打ち明けた。
「俺も。だから、君が仕事をしながらも、常に俺の傍にいてくれるのが嬉しい。」
ずっと前の話かもしれない。だけど私には、ちゃんとした記憶が残っているから。
誰よりも近くにいて、誰よりもあなたのことを知っていて、誰よりもあなたのことが好きだった。
周りにいる人たちとは違う。それを自分自身で確信したいのならば、泣いてはいけない。
あなたの死を認めてはいけない。誰が、私が泣くことを許してくれる?
一人、あなたの私の部屋に入って涙を堪える。ダルマスカの王女は、泣いてはいけない・・・と。
そんなとき、あなたの声が無造作に聞こえる。
「アーシェ、がんばりすぎだよ。俺の前では、素直に泣いていて。」
本当は、誰か、私が泣くことを許してくれる人をずっと待っていた。父でもバッシュでも、誰でもよかった。
だけど本当は、あなたに許してほしくて。あなたが許してくれるならば、私もきっと自分を許せる。
あなたと私の意識は、どこにいても繋がっている。あなたはそれを教えてくれた。
だからあなたの安らかに眠る姿を見たとき、堪えていた涙が静かに流れた。まるで、待っていたみたいに。
今日泣いた分は、明日からあなたとの記憶を携えて、前を向いて歩くために。
だから今だけは、あなたを想いながら泣かせてほしい。