あなたの温もりにふれらるこの時間に、伝えることはたくさんあるから



愛する人、もうどこにもいかないで。          















             
H o l d  m e  m o r e  a n d  m o r e
             















後悔しているといえば、そうなのかもしれない。これはあくまで客観的な意見だけれど。
なにが、と問われれば、いつのまにか最初からになってしまう。意志とは全く裏腹に。
結局そんなものだろうと諦めてしまえば、なんて楽なんだろう。
だけど、それでも捨てずにいられるのは、あなたが好きだから。
あなたのことが今でも好きで、せめて私の記憶だけになってしまったあなたと、いつまでも繋がっていたいから。
それがどんなに辛くても、あなたとの全てを失うよりはいい。
幸せだったころの記憶に、負けたくなどない。だけど、そんなことを選んでいる余裕もない。
だから私は、辛くても、あなたとの記憶を抱えて戦うことを決めた。









「・・・ラスラ・・・。」



ナブディスが落ちたときいたきいたあの日。
あなたは、今まで見たことのないくらい真剣な眼差しで私にいった。



「・・・もう、時間がないんだ。このままでは、ナブディスどころか、ダルマスカまで失われてしまう。」
「・・・じゃあ・・・。」
「・・・ナルビナに、行ってくるよ。」



あなたがそういうことは、もう最初からわかりきっていた。
だけど、改めてあなたの口から聞かされたとき、もう止めることなどできないと確信した。
王家の者やダルマスカ一の将軍がそこへいかなければいけないくらい、帝国には最早力はなかった。
選択の余地など、もうあのころの私たちにはなかった。



「・・・。」



黙り込んで、あなたと目を合わせようとしない私は、なにもいえない。
あまりの自分たちへの歯がゆさに、思わず下唇を噛む。
もう、本当になにも選べない。時の流れに身を任せて、ただひたすらにあなたの無事を願うだけ。



「・・・あなたなら・・・そういうと思ってた。だから、私は・・・。」



だから私は、ずっとあなたの帰りを待ってる。ずっとずっと、待ってるから・・・。

無事でいて、という言葉は、いらなかった。あなたは私のことを、よくわかっているから。
強く抱きしめられた瞬間に、今まで我慢していた涙が一気に溢れ出した。



「・・・情けないわ・・・。私、ダルマスカの王女なのよ・・・?もっと、しっかりしなきゃ・・・。」



抱きしめられて、髪を撫でられてあやされる私は、本当に情けない。
だけど、あなたが私を抱きしめる手は、もっと泣いてとでもいうように、温かい。
なのに、もうすぐこの温かみは、失われてしまう。



「君は強いから。だから私も、落ち着いてそこにいけるよ。」
「・・・だけど・・・。」
「心配するな。ローゼンバーグ将軍も一緒に行く。あの人は、君を一人になどしない。」



ならば、あなたは・・・?
そういいたかったのに、あなたのあまりに優しすぎる笑顔を見たとき、なにもいえなくなった。
いつか、この温もりは消えてしまう。それは、私が思っているよりもっと早い。



「ラスラ・・・。」



ならば、この温もりが消えてしまう前にいわなくては。
私がどれだけあなたのことが好きで、どれだけあなたのことを大事に思っているか。
あのとき、初めて私からあなたにキスをした。
言葉は、必要なかった。
深く抱きしめられて、深くキスされたときに、私の想いは、きっと全部あなたに繋がった。



だから次の日の朝。
目覚めると隣にあなたはいなくて、私の目元には涙の跡が残っていた。