少しずつ歪みはじめた現実を、受け入れられるだけの勇気
それは、悲しい夢が始まる、少し前。
I ' m a l w a y s i n t h e d r e a m
故国への郷愁を覚える。否、今は亡き、死都への郷愁といえばいいだろうか。
それは決まって、自分の不甲斐なさを感じるときで、行き場のない気持ちが必ずそこへ流れていく。
まるで、行きたくもないところへ仕方なく、行くような。現に、今自分の犯されている現状だってそうだ。
まるで、誰もから見放されたような絶望と悲しみの中で、それでも必死に生きてきた。
すべてを失った自分に、今できることはなにもない。それは占領された帝国があからさまに教え、同時に私の心に強く残る。
だからだろうか。今は遠く離れてしまった、幸せだったころの記憶が色褪せず輝いて見えるのは。
記憶の中には、その先の未来を知らずに微笑む私とあなたがいて、その周りにはいつも誰か、そばにいてくれた。
たった一つの居場所を、守っていくと決めた。それが幸せに一番近いことだから、と。
「過去に縛られたままでいることは、なぜでしょう、いつまでも慣れることはできないの。」
夢の中の私が、ずっと助けを求めて訴えかけている。だけど、答えてくれる人は、誰もいなくて。
そうつまり、私は本当に全部を失ったこと、夢の中でも示している。
だから、その朝目覚めたら、必ず涙の跡が残っている。どうして、幸せを描く想像の世界でも一人ぼっちなの?と。
幼いころは、幸せな夢ばかりを見ていた。帝国の平和、結婚、民の幸せそうに笑う声・・・。
全部、正夢になったのに。それらはあまりに脆く、一瞬で崩れ去ってしまった。
現実はあまりに受け止めがたく、それ故にそれでも受け止めるしかない自分の歯がゆさが滲み出る。
まるで自分に言い訳するように呟く。
本当は、もっと違っていて、これは、なにかの間違いで・・・。
「アーシェ、少し休もうか。今日は外が晴れていて、気持がちいい。」
あなたはそういって、私の手を優しく引いて、空の開けた空中庭園に連れていく。
そこは、2人だけが知っている、秘密の場所だった。
疲れたときは、ここでゆっくり休まないか。そういったのは、誰でもないあなただった。
だけどそんな大事な場所だって、今はもう、無くなっている。あなたも消えて、記憶の場所も失われた。形あるものは、なにもない。
残るたった一つのあなたがいた証は、私の手中にある。そう、私しか持っていない。
いっそ、記憶もなにもかも全部、失えたらいいのに。何度そう思っただろう。そしてその度に、行き場の無い寂しさに襲われたのだろう。
だけど、それじゃ生きている価値がなくなるから。あなたとの記憶を、せめて1つでも多く抱えて、もう失わないように・・・。
それは、悲しい夢が始まる前。私の小さな願い。