想いが1つに繋がる場所。
T h i s i s l o v e , t h i s i s w i s h
微笑んでいた。目が合えば優しい顔をして、二人きりになればささやかな愛をくれた。
そんなあなたが好きだった。いつもは控えめなあなたが、私の前ではそれさえも取り払って愛してくれるのが。
そして政略結婚という名義で結ばれて、両国の平和という建前で民の前で二人の幸せを誓った。
だけど・・・・・・。
抱きしめられることも、愛を囁かれることも、キスさえも ― こんなに戸惑って、怖がる私がいて。
あなたに近づきたいのに、その一歩が上手く踏み出せなくて。伝えたいことがあるのに、それさえもいえなくて。
ずっと前から、あなたとの結婚は決まっていた。だから、私もあなたも覚悟していた。
あなたと幸せになるって決めた。政略結婚という名義なんてなくても、あなたと幸せになれるくらい。
地位も名誉も全部取り払ってでも、あなたと私は結ばれる運命にあったと信じている。
― 私は、あなたを愛してる。でも、あなたの想いはどこから愛で、どこから義務なの?
繋がる先に、もしもあなたがどこにもいなかったら。これは私の独りよがりで、誰も受け取ることはできない。
あなたに応えることができない、臆病な自分が嫌なの。あなたを拒絶してるみたいで。
上手な触れ方も、話し方も、伝え方さえもわからない。でもあなたは、まるで仕事みたいに上手くしてしまうから。
― 私は、あなたを愛してる。でも、あなたの想いはどこから愛で、どこから義務なの?
あなたは ― たとえば私はなにも持っていなくても、そのままの私でも好きでいてくれた?
この立場じゃなくても、結婚しようって微笑んでくれた?抱きしめてくれていたの?
この答えは、あなたにしかわからない。だけど、本当のことをあなたの口から聞くのはとても怖くて。
― 私は、あなたを愛してる。でも、あなたの想いはどこから愛で、どこから義務なの?
微笑みのその向こうに、あなたの想いはあるのかなんて、恥ずかしくて聞けない。
死んでいった兄たちの代わり、同じ王家の血を受け継ぐ者同士 ― あなたと繋ぐ名義はたくさんある。
― 私は、あなたを愛してる。でも、あなたの想いはどこから愛で、どこから義務なの?
「アーシェ?」
「・・・少しだけ、こうさせて。」
誰もいない、二人きりの時間。あなたを後ろからそっと抱きしめる。
どんな態度をとったらいいかわからないの。だけど結婚が決まってからは、顔を合わせる時間は多くなった。
嬉しい ― でも、それだけじゃなくて。心の奥にある小さな蟠りはまだ消えなくて。
「・・・君からこうするなんて、珍しいね。なにかあった?」
「・・・あなたが、好きだから。それだけの理由じゃ、いけない?」
あなたはそっと私の手をはずして、向き直る。見上げたあなたは、優しく微笑んでいた。
「やっと理由がわかったよ。君がどうして落ち着かないのかって。」
「・・・わかっていたの?」
「わからないとでも?」
そういって、あなたは私を優しく抱きしめる。静止されて行き場のない私の手は、あなたの背にまわすしかない。
この場所は、私だけのもの。ほかの誰にも渡せない場所。そういい切るためには、どうしたらいいの。
「・・・わからないの。あなたとどう接したらいいのか。好きだから。」
「拒絶されたら、って?」
「・・・私はあなたのことが好きなのに、もしあなたがそうじゃなかったら。それを認めるのが怖いの。」
「もしそうなら、ただの政略結婚になってしまうだろうね。」
あなたは抱きしめる腕を解いて、私を見つめる。
「愛してるんだ。君の傍にいることを、許してくれないか。」
「・・・もう、お手上げよ。」
悔しいけど、照れ笑いするしかないのよ。私が今まで考えてきたことが、馬鹿みたいになるくらい。
遠回りして聞くくらいなら、最初からあなたを信じていればよかったのに。
― 私は、あなたを愛してる。
「好きだから、一緒にいたい。ただそれだけの理由でいいの?」
「アーシェは、ほかになにがある?少なくとも俺はそれだけ。」
「・・・政治的な意味もあるわ。」
「それは国同士の問題だから。俺にとってそれは関係ない。」
名義や建前がどうであっても、民が祝福してくれることに変わりはない。
それは、ダルマスカを誰よりも知っている私が、一番わかっていることだ。
この結婚が、民の幸せに繋がればいい。あなたと作る幸せの最初になれればいい。
「・・・そうね。」
吐き出した小さな蟠りは、あなたの胸へと消えた。