あなたと出会えた理由
月明かりの下、今宵も君に出会えること。
Y o u r l o v e i s i n m y h e a r t
月明かりが落ちる空中庭園に、そっと一人で立ち寄ってみる。
ガルデア式の美しいその建造物の象徴。まるで、全てのものからの祝福の宴。
過のレイスウォール王も愛したというそこは、木漏れ日が落ちる昼間とは違い、また幻想的な美しさ見せる。
沈黙が流れるその空間は、不意に吐いたため息を受け止めるには十分だった。
「ラスラ?」
沈黙を優しく透き通す細い声で、先ほどから探している愛しい人の名前を呼ぶ。
不安げに囁いたその声の持ち主は、振り向かなくてもすぐにわかった。いつも聞きなれている、愛しい人の声だ。
その彼女がここにいるという多少の驚きを踏まえて、彼は未だ不安げに覗く彼女に応えてみせた。
「アーシェ?」
「こんなところにいたのね。どこにもいなかったから、探してたの。」
特に理由はないのだけれど、と、安堵の笑みを零しながら付け足す。
人々の前ではあまり見せない、その素直な表情を見ると、先ほど吐いたため息など忘れてしまう。
何事にも変えがたいその一瞬は、もしかすると、自分が考える以上に大切なのかもしれない。
「・・・お仕事はもう終わったの?」
こちらのほうに歩きながら、彼女は問う。
その白くなだらかに揺れる彼女の服は月光に晒され、見事に美しい彼女の曲線を少しだけ見せる。
「あぁ、ちょうど部屋へ戻ろうと思っていたんだ。そのとき、ここに寄ってみただけ。」
「そう・・・。まさかこんな場所にいると思ってなかったから、見つけたときは驚いたわ。」
「特に探している理由はない、のに?」
「えぇ。不思議ね。」
そっと、困ったように微笑む彼女の、細くて白い手を手繰り寄せて、後ろから優しく彼女を抱きしめる。
髪からの甘い花の香りは、彼女のお気に入りのものだ。
こうして抱きしめていると、よりいっそう愛しく思ってしまうのだ。
どんな温かいベッドの上よりも、安らぎをくれるのはただ一人だ。
「・・・そろそろ部屋に戻らなくちゃ。明日はまた早いのでしょう?」
「いや、明日は大したことはない。午前に会議が一つ入っているだけだ。」
「午後は?」
「君のお好きなように。」
そっと顔を覗き込めば、彼女の控えめな、けれど嬉しそうな微笑がした。
ささやかな幸せを、大事にかき集めて過ごす彼女の、一つでもいい、幸せになりたい。
髪にそっとキスすると、くすぐったそうに顔を下に向けた。
「この空中庭園は、夜もとても幻想的なのね。こんな時間に入ったのは初めて。」
「俺も。君がきてくれなかったら、2つめのため息を吐いて台無しにするところだった。」
「ため息吐かないように生きるのは、あなたでも少し難しいことね。」
そういうと優しく、抱きしめる腕をはずして、ゆっくりとその手を天に向かって差し出す。
月光を浴びるその姿は、王家の血を継ぐ者としてはなく、一人の女性として美しかった。
「・・・この平和が、いつまでも続けばいいと思うわ。この結婚が、民の幸せに結びついてほしい。」
「君の幸せには?」
「もう十分結びついてるから。」
部屋に戻りましょう?と、一呼吸置く間もなく続けた彼女を、今度は正面から抱きしめる。
少し驚いたように上を向く彼女に、触れるだけの優しいキスを落とす。
「・・・続くさ。そのために、俺はここへ来たんだ。民と君を、幸せにするために。」
「・・・そうね・・・。」
「愛してる。」
耳元で低く囁かれた誓いの言葉が、心の奥にすっと通り抜けていく。
自分には、この人だけなのだ。たとえ政略結婚という名義で結ばれた仲であっても、彼を愛している。
愛している人が自分を愛しているなんて、奇跡だ。
1つに寄り添う影を、ささやかな月明かりが照らす。