それは、あなたが傍にいることを教えてくれるから
幸福の理由。
T h i s s t o r y f r o m y o u
あなたが好きだというその本を、私は何度読んだことだろう。
もちろんそれは、いつも読んでいるような帝王学や難しい本ではなくて、どこにでもある物語。
幼いころに教えてもらったそんな物語は、大人になった今でも、私はとても好きだった。
「どうして?」
たくさんあるそれらの本のなかから、あなたは一冊を手にとって私に問いかけた。
私は照れくさそうに、答えてみせる。
「どうしてでしょう?」
理由はもちろんある。でも、それを口にしたらあなたは必ず笑ってしまう。
それに ― 今、ここにある幸せを否定してしまいそうな気がして。
あなたは、少し難しい顔をしてみせたけど、半分は微笑んでいた。
「文字が少なくて、読むのに苦労しないから、とか。」
「・・・それもあるかも。目が疲れちゃうから。でも、それが正解じゃないわ。」
「ハッピーエンドだから。」
「当たり。」
難しい本には、ハッピーエンドもなければ、終わりもない。
大人が読むような物語は、いつもハッピーエンドじゃない。涙ばかりが流れるものが多い。
でも、小さな子供が読むような本は、そんなことないでしょ?
そういうと、やっぱりあなたは微笑んでいた。
「・・・君らしいよ。」
「ほら、笑うでしょ?だからいいたくなかったのよ。」
「笑ってないよ。ただ、本当にアーシェらしいなって。」
あまり厚くない、その手に持っている本を、あなたはそっと開く。
このあたりでは有名なその物語は、昔、あなたに教えてもらったものだ。
「懐かしいな。」
「大切にしていたの。寝る前にいつも読んでもらっていたわ。幸せな夢が見れるようにって。」
「今は?」
「・・・今は、いいの。あなたがいるから。」
照れくさそうにいう私を、あなたは優しく抱きしめた。