ただ、想いを告げたいだけなのに



手繰り寄せた冷たい空白に、初めて目が覚めた。















             
I  c a n ' t  s a y  m y  l o v e  t o  y o u
             















「ラスラ・・・?」



いつ眠りについたのだろう。昨日の記憶が、気だるさを残した頭にまだ戻ってこない。
そうして、次の瞬間に、呟いたその人の名前を呼んだ自分の唇にゆっくり手を当てた。
この人の名前を呼んではいけないのだ。いってしまえば、きっと涙が止まることはないだろう。
外で降り頻る灰色の雲と雨が、私の肩を責めたてた。

この結婚は、今にして思えば、意味があったことなのか。
政略結婚という建前で結ばれた私たちの間には、ほんの少しでも愛があったのか。
私は ― あなたを愛してた。











「君に、そんな不安を与えていたなんて、思ってもいなかったよ。」
「だって・・・。」



周りの人はみな、義務的な結婚だというから。
少し俯いて続ける私に、あなたは軽いため息を吐いてみせた。
これは、あくまでも政略結婚なのだ。そうしなければ、あなたと私は結ばれていなかった。
でも、意志がなかったわけじゃない。あなたを愛してる。それは紛れもない事実だ。



「君を愛してる。そうしなければ、たとえ政略結婚でも断っていた。」
「ならば・・・。」
「たとえ周りが政略結婚といおうとも、関係ない。意志があったのは事実だ。」



強く語られたその言葉が、なによりも嬉しかった。
独りよがりだった想いが、ようやく一つに繋がる場所を見つけた。











こんなにも愛しているのに。あんなにも愛されていたのに。
もう、あなたに問いただすこともできない。怒ることも、想いを告げることも。
なによりも愛しい人が、この世から消えてしまった。
愛されていた記憶さえ曖昧になる。こうしてまた、想いは独りよがりになってしまう。

それでも・・・、と呟く。
どこか遠くで私を見守っているであろうあなたも、私と同じように今も愛しているのだ、と。