それはまだ、なにも知らなかったころに交わした約束



あのころの幸せを。















             
P a s t  c a n ' t  c h a n g e  f o r e v e r
             














死都ナブディス―。2年前、原因不明のたった一度の爆発で、都としての機能を失った。
美しい建造物や自然は一瞬にして姿を消し、今は誰も近寄ろうとはしない場所となった。



「ナブディス。」



その名前を聞くたびに、息が苦しくなる。
戦争の被害にあった代表として語られるその都市は、無常にもあなたの故郷だ。
二度と見ることのなかった、こんな都をもし見たら ― あなたは何を想うのだろう。私に何を託すのだろう。
こうして目の前に広がる景色は、前に一度だけあなたと行った美しい景色の面影を残してはいない。
こんな形になるなんて、こんな形でここに来るなんて、あのころの私にどうして予想できたのだろう。
あのころがどんなに幸せだったか、今になって痛いほど思い知るなんて。



「アーシェ様、大丈夫?」 「えぇ、大丈夫よ。ありがとう、パンネロ。」



今までの自分に、後悔はしていない。いつも必死で戦ってきたことにも、後悔はない。
けれど、こうして自分が戦うことに価値がないのではないか。そう思う日は何度もあった。
そしてその度に、悲しみを口にする自分の弱さを知った。
誰もいなくて、気がつけばいつも一人だった。当たり前のように人たちは、いつの間にか消えてしまった。



「美しい都なのね。何度でも行きたくなるような、そんな場所。」



そういった私を、少しはにかんだような、それでも嬉しそうな顔をしたあなたを、今でも覚えている。
簡単にいけるような場所ではなかったけれど、その時見た景色はずっと私の中にある。
たとえ戦争の影が忍び寄ろうとしていても、私が見た人々は常に明るかった。明るく、幸せそうだった。
隣を見れば、あなたもまた幸せそうに微笑んでいた。まるで、自分の幸せだとでもいうように。
ダルマスカも、あなたが生まれたこの美しい都も、なにがあっても守りたい。そう思わずにいられなかった。



「時間があれば、何度でもこの場所へ来ましょう?あなたの故郷は、私の故郷でもあるわ。」
「・・・そうだな。」



帰り際、何気なく交わした約束は、今でも果たされるそのときを待っている。
だから、こんなところで立ち止まるわけにはいかない。涙を流すのも、全てが終わってからにしよう。
今はまだ、しなくてはいけないことが、たくさんある。



「アーシェ、行こう。」



そういわれて、私は止めていた足を走らせる。
未来への希望を、実現させるために。