誰にも見せない我侭も、願いごとも、全部伝えて



ただ、それだけの幸せ。















             
P l e a s e  g i v e  m e  y o u r  s o u n d  m o r e
             















庭園にあるカスケードを、緩やかに流れる水の音しか聞こえない。
大きな窓に映されるのは、沈みかけた日と、それと同時に浮かぶ星。今日はいつにも増して輝いているように見える。
今日の終わりを告げる曖昧な境界線をぼんやりと見つめては、またゆっくりと目を閉じる。
起きて、たまには2人だけのために夕食を作りたいのに、まだまどろんでいたい気持ちもある。
これじゃあ、またあなたに笑われてしまうわね、と自分の矛盾した気持ちに苦笑する。
でも、今ならまだ間に合う。そう思って、隣で小さな寝息を立てながら眠るあなたの腕を、そっと肩から下ろした。
そして、ダイニングへゆっくりと出向こうとしたときだった。



「・・・どこへ?」



小さな声で、だけどしっかりと、目を瞑ったままあなたが尋ねた。
そして優しく、またあなたの腕の中に戻されてしまう。



「もう、起きてたの?眠ってると思ってたのに。」
「君を、たまには驚かせようと思って。」
「あなたの言動にはいつも驚かされるわ。」



ふふふ、と笑うと、優しい手つきで上を向かされて、同時に優しく唇を塞がれた。
あなたは、こうしていとも容易くするキスするたびに、どれだけ私が戸惑うかわかっているのだろうか。
わかって、それでもしているのであれば、彼は結構やり手なのかもしれない。



「・・・もう、夕食が作れなくなっちゃう。」
「今日は作らなくていいよ。もう少し休もう。」
「でも、そしたらこの前と一緒になっちゃう。またあなたに笑われちゃうわ。」
「この前は、君が一人で寝過ごしただけだろ?一緒にされちゃ困るな。」
「もう!からかうのはよして!」



そういうと、あなたは微笑んで、なにもいわずに私を抱きしめる力を少し強くした。
あなたの心臓の音を、間近で聞く。



「・・・ここは、きっと世界で一番好きな場所よ。こうして、あなたの心臓の音を聞くの。」
「君の趣味が心臓の音を聞くなんて、初めて知ったな。どれくらいの速さ?」
「別に趣味じゃないわ。ただ、安心するの。」



そうして、あなたの広い背中にまわした左手で、耳に届くそのままの速さを刻んでみせた。
規則正しい旋律に合わせてゆっくりと、でも、しっかりと。
あなたが生きている証をこんな間近で聞くのは、世界でただ一人、私だけであってほしい。



「・・・君の速さには負けるな。」
「・・・いつも一人だけ余裕なのね。ズルイわ。」



そのあと深く口付けされたとき、聞こえていたカスケードの音もなにも聞こえなくなった。
聞こえるのは、あなたを求める自分の鼓動だけ。
そしてそれは幸せの音とどこか似ているのだと、思った。