儚いものに犯された、最後までの勇気



今でも記憶に深く残る、あなたへの想い。















             
B e c a u s e  I ' m  s a d
             















「アーシェ?」



名前を呼ばれると、今は、息ができないほど苦しくて仕方ない。
だって、あなたはもう知っているのでしょう。この国の未来はないのかもしれないってこと。



「・・・こんな夜に、どこへ行ったのかと思ったよ。」



バルコニーに遠く、潮騒が聞こえる。ダルマスカの夜に吹く風は、冷たい。
肌に身につけているのは、ガウンだけだ。あなたはそんな私を見て、後ろからまた抱きしめるの?
風邪をひいたら困るだろう?といって、心配してくれるの?



「・・・なにか、嫌な夢でも?」
「・・・ううん。なんでもないの。ただ、外の空気を吸いたかっただけなの。」
「それならよかった。」



本当はそれ以外の理由もあるんだけど。今はただ、それを口になどしたくはない。
あなたに吐く初めての嘘は、あまりにも残酷なものだ。
大丈夫?
えぇ、大丈夫。なんにもないわ。
こんな当たり前で簡単な言葉に、あなたと引き裂かれてしまうなんて。



「でも、もう中へ入ろう。空気は十分に吸ったはずだろ?」
「えぇ。でも、もう少しだけ。」



あなたは心配そうな顔で、私のほうを見て、優しく抱きしめる。
今だけは、もう少しだけ、もう少しだけでいいから、あなたの温もりを感じていたい。



「大丈夫?」
「えぇ、大丈夫。なんにもないわ。」



だって、ほら。
こんな風にして、あなたは私の許を去っていくんでしょう?