限られたテリトリーの中で、なにを伝えるか。















             
I t  i s  . . .
             















ダルマスカ王宮の大きな窓に、夕日が映し出される。
それは一日の終わりを告げるものであり、そしてあなたとのさよならを意味するものでもある。

こういうときに限って、と思う。
婚約したとはいえ、まだ正式な結婚はしていない。結婚までには、時間がまだ必要なのだ。
だから、もう少しだけ一緒にいたい、とはまだいえない。それが今の立場だ。
そんな頼りない切なさと・・・ほんの少しの願いを抱えながら、私はあなたにいう。



「もう・・・行ってしまうのね。」



ガルデア様式のソファに座り、私を抱きしめて髪を撫でるあなたの手は一瞬止まる。
帰り際にこうして同じことをいえば、彼もまた、同じように私に応える。
そうして、私の顔を優しい、あるいは切ない微笑を携えて覗くのも。



「また、近いうちに来るよ。どんなに忙しくても、絶対。」
「・・・この約束は、とても重たい意味を持つものよ。知ってた?」
「毎晩、考えてくれるんだろう?今なにをしているのか、なにを考えているのか。」
「・・・少なくとも私の頭を支配するのよ。眠れないときもあるわ。」
「ならば今度は、王女が睡眠不足になる前に来るよ。確かに、とても重い意味だな。」



あなたは、約束を破ったことがない。どんなに忙しくても、こうしてまた、会いに来てくれる。
言葉よりも痛いくらいに伝わる、深い想い。ならば、伝わっているだろうか。
あなたがどれだけ好きで、大切で、必要としているか。彼の余裕な表情の前だと、つい伝えられなくなる想い。
こうして、この夕日を見るたびに、この想いを何度伝えようとしたことか。

好き、とはなかなかいえない私が零した、さよならの意味を込めた言葉。
あなたがその言葉の裏に隠された深い意味を知ったのは、いつのころだろう。
そして、あなたに近づく一歩を上手く踏めない私のアンバランスな心を知り、その距離を縮めようとする姿勢も。
それはあなたの高い観察力故にではなく、私を優しく見守ってきた証だということに今更気づく。
結局元を正せば、あなたも私も一緒なのだ。
こんな愛しさと、一抹の切なさをを抱えて、それをどうにか伝えようとしていることは。

ラバナスタの夕日は、そんなふうにして地平線の向こうに落ちていく。
そして、これもまた、いつもと同じことなのだ。



ある一定の微妙なバランスを保ちながら、この小さな願いを叶えるために、あなたは私の許を去る。
次の約束を作るささやかな幸せを、夕影に残して。