「アーシェ」
バルフレアが名前を呼ぶ。私はその声が好き。けれど彼はそれを知らない。
こんな秘密を自分の中で抱えていることが、今は何故かとても愛しい。
意地を張ることはときには大切だけれど、でも彼の前ではずっと素直で笑っていたいな、と今日は思った。
「・・・オイ、聞いてるのか?」
「今回の財宝は意外と簡単に盗めたってお話でしょ?」
「聞いてたのか」
「え、本当にそうだったの?」
何いってるんだ?と彼は呆れて、でもその次には微笑む。
どうしてだろう。どうして今日はこんなにも彼が愛しいのだろう。久しぶりに会ったわけでも、何か嬉しいことがあったわけでもないのに。彼の笑顔を見るだけで満たされる。
今なら彼の声が好きだとか愛してるだとか、普段はいえない気持ちも伝えられる気がした。
「・・・ずっと、話していて?」
「聞いてもいないのにか?女王様の機嫌がいいと怖いな」
「あなたの声がとても好きなの」
彼は驚いた表情をする。いつものポーカーフェイスが少し崩れた。
そっと微笑んで彼に抱きつく。でも、さすがに顔は恥ずかしくて見せられない。
今日くらいわがままを許してほしい。
「ずっと、話していて。声を聞かせて」
「・・・これ以上いったらどうなるかわかってるのか」
「わかってる。でも、聞かせて」
自分でも驚くくらいのことを口にしたことはわかっている。けれどそれでいい。もう止められない。
きっと彼は驚いて、でも微笑んでいるのだ。私を抱きしめる腕は優しくて強い。
恥ずかしいけれど、今日はそれでもいい。こんな日もきっと必要だ。
覚悟するんだなと甘く囁く彼に、私は照れながらこっそり頷いてみせた。